企業の経営診断、経営戦略の立案を行う場合、以下のようなプロセスを要する。
(1)企業概況分析(業種・業態・製品・従業員/売上高/経常利益率の推移・社長年齢・後継者など)
(2)既存の経営戦略・理念・ビジョンの確認(社長インタビュー等により、経営ビジョンや事業ドメインの確認など)
(3)経営環境分析
・内部環境(財務状況・立地・経営資源・得意分野/技術・商品別売上構成及び推移・人事制度など)
・外部環境(主要顧客・市場動向・競合他社・業界動向・技術動向など)
(4)基本戦略の検討(SWOT分析により、自社の強みと市場の機会をマッチング)
・ターゲットと商品、提供方法を明確にする。「誰に何をどのように売るか」。
(5)個別戦略の検討(マーケティング戦略・財務戦略・業務プロセス変革戦略・人事/育成戦略・情報化戦略など)
(6)実行計画の検討(予算・スケジュール・業務分担など)
(7)定期的な実行計画のチェックと見直し(PDCAサイクルを回す)
中小企業の経営に関しては、大企業に比べて、以下のような特色がある。
(1)社長の考え方・姿勢が企業文化そのものに直結する。
(2)経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)が大企業に比べ、不足しがちである。
(3)意思決定が早く、大企業より、俊敏に市場の変化に対応できる。
中小企業の経営は、自らの強みを生かせる特定セグメントへの経営資源の選択と集中の方向に向かうべきである。
(1)弱みの克服より、強みをさらに伸ばす。
弱みの克服には時間とお金がかかる場合が多いので、財務体質強化程度にとどめ、他社にまねのできない強みを伸ばす方が、効率的である(製品差別化戦略)。
(2)ターゲットを絞り、ニッチな領域に経営資源を集中させる。
大企業と同じように広範な市場を狙っても、体力的に勝つのは難しい。大企業が狙わない市場領域を見出し、そこでNo.1(Only One)になれるようにする(市場細分化戦略)。
(3)P(計画)D(実行)C(チェック)A(アクション)のサイクルをすばやく回して、大企業にない俊敏性を生かす。
いきなり最適(best)な経営戦略はできない。トライ&エラーを繰り返して、現状よりもbetterな方向に持っていく。
(4)外部資源を使う。
大企業にくらべ不足している経営資源は、外部のサービスをうまく利用しながら、固定費を抑えつつ、補っていく。(政府・政府系金融機関の中小企業支援策。経営やITのコンサル活用。SaaSの導入など)
(5)過去の成功体験に捕らわれず、未来志向で、経営を進めていく。
市場環境は大きく変わってきている。過去の成功体験が必ずしも有効に機能するとは限らない。社長の思いが強く、なかなか既存の枠組みを変えられない企業も多いが、思い切って、未来志向で自らの経営革新を進めていくことが必要である。
(6)経営の見える化を行う。
中小企業は「KDD」と言われてきた。K(勘)D(度胸)D(どんぶり勘定)のことである。KDDを脱却し、明確な経営戦略を示し、営業や生産の現場の状況もある程度、客観的に評価できる指標を用いて、会社の現状を、客観的に見える状態にする。そこから、次の打ち手を考え、その効果を把握できるようにする。
財務諸表をせっかく作成しているのだから、財務分析をしておきたい。経営指標自体は簡単な計算式で求められる。
(1)どんぶり勘定では、いつの日にか破綻をきたす。財務状況の経年変化や、同業他社との比較において、財務の安全性、収益性等をチェックしておく必要がある。
(2)必要なのは、直近2期程度の「損益計算書」「貸借対照表」である。
(3)上記の数字から、以下のような指標を算出し、分析する。
・総合収益性(総資本営業利益率・総資本当期純利益率(ROA)・自己資本当期純利益率(ROE) 等)
・売上高利益分析(売上高総利益率・売上高営業利益率・売上高対労務比率 等)
・回転率・回転期間分析(総資本回転率・固定資産回転率・売掛金回転期間・棚卸資産回転期間 等)
・短期支払能力分析(流動比率・当座比率 等)
・資本の安定性分析(自己資本比率・負債比率 等)
・その他(営業・投資キャッシュフロー・労働分配率 等)
(4)上記のような経営指標を算出(エクセル等で簡単に算出できる)し、分析する。
(5)分析する際に有用なのは、前期と当期の比較と同業他社との比較である。
同業他社との比較には、「中小企業の財務指標」(中小企業診断協会発行・同友館発売)が有効である。